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もっと身近な言葉で言えば、「自分ひとりくらい汚染物質を放出しても、量が少ないから大した影響がない」と考えるのは大きな間違いであるということです。
最近、大きな話題になっている「環境ホルモン」は、「『自分ひとりくらい……』という考えが地球の生物を絶滅させかねない」ということを警告しているのではないでしょうか。
人類は子孫を残せなくなる?「1940年には精液1ミリリットルあたり1億1300万個あった精子の数が、90年には6600万個と半減していた。
また生殖能力に支障が出るレベルとされる精子数2000万個以下の男性の数は3倍になった」「日本人の健康に見える若者でも、精子の濃度や運動率が世界保健機関(WHO)の基準を満たしたのは、34人中1人しかいなかった」最近になって、世界各地から恐るべき研究結果が発表され始めました。
人間がつくりだしてきた化学物質が、生物体内でホルモンに似た働きをしたり、ホルモンの働きを阻害したりして、生物の生殖機能などに悪影響を及ぼしていると言うのです。
この化学物質のことを「環境ホルモン」、正確には「外因性内分泌かく乱化学物質」と言います。
環境ホルモンは固有名詞ではなく、ホルモンをかく乱する化学物質の総称です。
環境ホルモンの具体的な影響としては、「生物の発育や代謝で重要な役割を果たすホルモン系のバランスを乱し、間接的に生殖の異常、乳ガンなどを引き起こす」とされています。
これらが事実であれば、やがて人間の子どもをつくる能力(生殖機能)が失われ、子孫を残すことができなくなるかもしれません。
身近にある環境ホルモン環境ホルモンの疑いが持たれている物質には、アトラジン(除草剤)、ノニルフェノール(界面活性剤の成分)、ビスフェノールA(エポキシ樹脂等の原料)、フタル酸エステル(プラスチックの可塑剤)、スチレンダイマー・トリマー(カップ麺などの発泡ポリスチレンの成分)、有機スズ(船の底に塗る塗料の成分)、PCB(電気絶縁物の成分)、DDT(農薬、殺虫剤)、ダイオキシン類などがあげられています。
難しそうな名前が並んでいますが、これらの化学物質は、以前から健康への悪影響が指摘されているものばかりです。
しかも、私たちの身の回りで大量に使用され、すでに環境中にかなりの量が放出されています。
たとえば、カップ麺の容器、缶詰内部のコーティング部分、食品用ラップ類などから環境ホルモンがしみ出して、食品を汚染している可能性があります。
また、哺乳瓶やおしゃぶり、ビニール製のおもちゃには、柔らかくするために可塑剤が使用されています。
この可塑剤の中には環境ホルモンの疑いがある化学物質が含まれています。
乳幼児が、哺乳瓶やおもちゃをしゃぶったり、かんだりすることで、環境ホルモンが体内に入ってしまう可能性が非常に大きいのです。
このほかにも、合成洗剤や殺菌剤など、日常的に使われている化学物質も環境ホルモンの疑いが持たれています。
すでに生物や人体への影響が出ている米国では、汚染された湖の魚を食べている鳥に奇形が発生したり、卵が産めなくなったりしています。
また、ワニのペニスが全然発育しないので調べてみると、流れ出した農薬の影響を受けていました。
人間でも、男性の精子数が減ったり、女性の子宮内膜症、乳ガンや卵巣ガンなどが増えています。
これらが環境ホルモンによる影響なのかどうか分からないという専門家もいますが、だんだんその疑いの声が強まってきています。
1兆分の1で影響を及ぼす環境ホルモンの中には、水中に1兆分の1含まれているだけで、生物に影響するものがあるとされています。
1兆分の1は、「50メートルプールの中に目薬を1滴落としたくらい」という極めて低濃度です。
日本の8000倍、世界の170倍くらいの人口の中に1人いた場合に、1兆分の1になると言えばイメージできるでしょうか。
とにかく、こんなに微量でも問題になるのです。
環境ホルモンを出さないためにでは、環境ホルモンを出さないために、私たちは何をすればいいのでしょうか?それは、当たり前のようですが、「合成化学物質を使用しない」ということです。
合成化学物質の多くは、急性の毒性についてはチェックされていますが、慢性の毒性や環境ホルモンとして振る舞うかどうかについては、まったくと言っていいほど分かっていません。
安全が確認されていないものをどうして使い続けることができるでしょうか。
また、「合成化学物質をつくらない、捨てない」ということも大切です。
現在までにつくられた合成化学物質は、10万種類以上もあります。
これらを直ちに廃止せよと言っても現実的ではありませんし、激しい抵抗も出てくるでしょう。
しかし、少なくとも「環境ホルモンの疑いがある物質」の使用を止めなければ、地球の生態系が崩壊する可能性が高くなることは間違いないのです。
いま私たちにとって大切なことは、環境ホルモンの現実と未来に対する脅威を認めることです。
たぶんこれからも関連業界などから、「まだ因果関係が特定されていない」とか「調査のサンプル数が少ないので、結論を急ぐべきでない」という見解が出てくるでしょう。
しかし、水俣病や薬害エイズのように、因果関係が特定されるのは、いつも多くの犠牲者が出た後であることを忘れてはなりません。
ひょっとしたら、その犠牲者は自分かもしれないし、わが子や孫かもしれないのです。
ここで重要なことは、「環境ホルモンによる犠牲者のすべてを数値として表すことはできない」ということです。
生まれてこなかった命、受精しなかった命は犠牲者として数えようがないからです。
因果関係を特定する意味について、改めて考える必要があるのではないでしょうか。
触媒効果と相乗効果。
環境に放出された化学物質は、単独で存在することは絶対にあり得ず、常に複数が同居しています。
つまり、単独で影響がないからといって、人体に対して影響がないとは決して言えないのです。
その物質自体は直接作用しなくても、その物質が存在するだけで他の有害物質が活性化することがあり得ます(触媒効果)。
またその物質の濃度は許容限界以下であったとしても、ほかの物質との相乗効果(複合作用)で生体に大きな影響を与えることがあります。
1+1=2という相加効果(足し算効果)や1+1=0という負触媒効果(引き算効果)も一部見られますが、それよりも、1+1=10とか100になることが多いということです。
現在、環境ホルモンの疑いがある合成化学物質は70種類ほどと言われていますが、今後の研究でもっと多くなるでしょう。
そして、これらの化学物質がどのように組み合わされたとき、どのような影響が出るかをすべて調べなければなりません。
このとき、環境ホルモン同士の相乗効果を調べるだけでは片手落ちです。
環境中に存在するすべての物質を対象にしなければなりません。
さらに物質だけでなく、紫外線や自然放射能との複合作用や微生物との関係(無機水銀が太陽光や微生物の働きなどで有機水銀に変わるなど)も調べなければなりません。
とは言っても、これらをすべて調べることは、膨大な時間とコストが必要で、現実的ではありません。
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